昭和期の物質文化を保存する

日本(1926–1989)の3Dアセットと物質文化に関するメタデータを集約した、キュレーション型デジタル・リポジトリです。 研究と教育の現場に、分散するデジタル・ヘリテージへのアクセスをつなぎます。

アーカイブについて

本アーカイブは、1926年から1989年までの日本の3D表象を探し、確かめ、論じ合うための協働のハブです。実物もモデルファイルも所蔵しません。モデル、フォトグラメトリーによるスキャン、デジタル復元がどこで公開され、誰が作り、どのような条件で利用でき、それぞれが時代について何を示しうるのかを記録します。本アーカイブは、利用者が寄せる登録、訂正、教材によって育っていきます。

ビデオゲームのなかの昭和の品々

昭和の日本を舞台にしたゲームは、プレイヤーが手に取れる物によって時代の感覚を組み立てています。1986年の横須賀を舞台とする『シェンムー』(1999年)では、主人公がカプセルトイの販売機(ガチャ)に100円玉を入れ、1缶100円の自動販売機で缶飲料を買い、ウォークマンでカセットテープを聴き、セガの『ハングオン』や『スペースハリアー』がそのまま遊べるゲームセンターで夜を過ごします。カプセルのフィギュアの多くはセガのキャラクターなので、ゲームのなかの1986年は、発売元自身の作品群のショーケースも兼ねています。

1988年12月を舞台とする『龍が如く0 誓いの場所』(2015年)は、この手法をバブル経済へと持ち込みます。主人公たちはポケットベルを持ち歩き、テレホンカードを探し、テレクラを訪れます。ファンがタミヤのミニ四駆になぞらえるミニゲーム「ポケサー」で小さな車を走らせ、架空の街・神室町のハイテクランドセガでは『アウトラン』や『スペースハリアー』が稼働しています。物語は土地をめぐる争いを軸に展開し、街にはディスコ、公衆電話、ポケットベルといった、そのブームの夜の風景が配されています。

日々の習慣から時代を組み立てるゲームもあります。『ぼくのなつやすみ』(2000年)は1975年8月の田舎に少年を置き、その毎日はラジオ体操、朝顔の水やり、虫捕り、虫相撲で進みます。1980年代の墨田区を舞台とする『パラノマサイト FILE23 本所七不思議』(2023年)は、一つの物に時代を託しており、開発者は英語のインタビューで、ブラウン管テレビをその時代の象徴として用いたと語っています。

これらのゲームを通して、硬貨を入れる機械、ブラウン管の画面、カセット、公衆電話など、ごく少数の物が時代を代表しています。それらは昭和を生きたことのないプレイヤーにも読み取りやすく、硬貨やボタンやダイヤルを介して遊びへと誘います。この選択が記録しているのは、画面の上で何が「昭和」として読まれるかです。そうした物が実際どれほど普及し、どの家庭や地域で、誰にとって身近だったのかは、別の問いです。本アーカイブのカタログは、各モデルにその出所と示しうる内容を添えることで、デザイナーや学生がこの問いを立てられるように作られています。

昭和ノスタルジア

「昭和」は時代であると同時に、一つのスタイルにもなりました。若者研究機関SHIBUYA109 lab.によれば、現在の「昭和レトロ」ブームは2018年頃、純喫茶のクリームソーダの写真がSNSで広まったことをきっかけに若者の間で定着し、シティポップのレコードやバブル期のファッションがそれに続きました。このブームには、2006年の日本アカデミー賞最優秀作品賞を受賞した山崎貴監督の映画『ALWAYS 三丁目の夕日』(2005年)という先例があります。

レジャー産業も同じ方向へ動いています。2021年5月、入場者の減少が続いていた所沢市の遊園地「西武園ゆうえんち」は、100億円をかけた改装を経て再開しました。その中心は1960年代を再現した全長130メートルの「夕日の丘商店街」で、山崎貴監督と制作したゴジラのライド・アトラクションも加わりました。

海外では同じ時期に、シティポップが新たな聴き手を得ました。竹内まりや「Plastic Love」(1985年)は、ファンが長尺に編集してアップロードした動画が2017年からYouTubeのおすすめを通じて広まりました。松原みき「真夜中のドア~Stay With Me」(1979年)は、2020年にインドネシアの歌手によるカバーをきっかけに世界のストリーミング・チャートに入り、2026年にはSpotifyでの再生回数が5億回を超えました。

同じ関心が、ワールドビルダーやゲームデザイナーをこの時代へと引き寄せています。この時代の物質的な記録は豊富で、新しく、身近にあります。ノスタルジアはまた、その記録をなめらかに均してしまいます。商店街のぬくもりを売り物にする一方で、繁栄を支えた過重労働や公害、石炭を画面の外に置くのです。本アーカイブは各アセットに出所と限界を添えることで、1960年代の団地の一室をしつらえるデザイナーと、戦後の家事労働について書く学生が、同じ対象から出発できるようにします。そのうえで授業は、近現代史とゲーム・仮想世界のデザインを並行して教え、それぞれの分野が互いの主張を検証し合う場となりえます。

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